Death earth love-R 【3-4】

  

  

 

【参話】

その球状の物体はその空間の中で回転していた。
あまりにも大きいその物体はある日突然、回転してた軸の位置が変わり偏芯して一瞬だけ1回転したあと元の回転軸から少し角度を変えて再び何も無かったかの様に回り始めた。

・・・その球状の物体には多くの生命が住んでいて、そこの大部分を占めてた動物はその球体を「地球」と呼んでいた。
それらの大部分があたかも簡単に滅んでしまった。

中心軸の位置が変わって偏芯回転時にその両端近くに残された島の原住動物のみが生き残った。
支配種だった「人間達」の地名で現すと・・・新しい北極点は日本列島の北海道の少し上にあるロシア領の樺太で樺太は海の底に沈んでしまったが北海道と呼ばれる島だけがポツンと残った。
南極点は南アメリカ大陸とアフリカ大陸の中間より下だったが、少し外れた位置にブエノスアイレスという地名だった場所が島となって残っていた。

偏芯した瞬間、海水が大きく動いたのだ。
それはあたかも巨大な津波だった。
一瞬の内にオーストラリアを中心とする地球の1/3は海の水位が2000mも上がり、全ての物と命が飲み込まれてしまった。

津波の通り道だったユーラシア大陸、ヨーロッパ、アフリカ大陸、反対側にあったアメリカ大陸をほぼ数時間飲み込んでしまっていた。
全てのものが破壊され、全ての物が命を海の底に落とされてしまった。 
噴火、爆発も起こり、地球内部に大陸が飲み込まれていった。
通常の安定した回転に戻った時、海水は球面に戻ったが、殆どの生き物が一瞬で絶滅してしまっていた。両端近くにあり崩れなかった島にいた者と、ほんの一握りの幸運だった者のみが生き残ったのだった。

生き残った者の中では、「大きい天体が近くを通ったのだ」とか「天文規模の破壊力のある爆弾が暴発してしまった」「某国で開発されていた反重力装置が暴走してしまった」と噂していたが、原因は明かされる事はなかった。

皆、生きる事のみに必死だったからである。


地球上に残されたこの二つの島以外に人が住める環境は無くなってしまった。
小さな陸地は火山活動によって沈下して、水面下に沈んでしまった。
大きな大陸は存在していたが、彼方此方にあった原子力発電所は空から襲い掛かる津波によってボイラーに水が入り爆発して、大惨事となり、公開されてない研究施設では破壊された施設からバイオハザードが起り、わずかに生き残った人々も死滅していった。

飛行機で一時離脱していた人々も全て死んでしまった。
地球の突然の環境変化による影響か、何かの戦略兵器事故が起こったのか地球上の空を飛んでいた全てのモノが地上に落ちてきた。
地球が偏芯して一回転しただけで、地球上空を回っていた人工衛星も軌道が狂ってしまい全て落ちてしまったか、地球の反対側に飛び去ってしまった。

そして二度と飛行機は空を飛べなくなった。
生き残った科学者による解説だと地上30m以上は今までの流体力学の及ばない世界に作り変えられてしまっていた。

なんとかその2島以外で運良く逃れられて生き残った人々は
その2島を目指した。

地球上の移動手段は、海では小さな船しか使えなくなった。
以前より、月の影響が強くなり潮の満ち引きも激しく、常に海上では荒波が舞っていた。

陸地は、彼方此方が水でえぐり取られていて道路と呼べるものは存在してなかった。数キロ歩いても大きな湖の様な水溜りやあって常に迂回しなければいけなかった。迂回しても大地が割れて渡れない場所が多く・・・結局、沿岸を徒歩で移動するしかなかったが放射能の影響でたどり着く前に殆ど死亡してしまった。

沿岸には並ぶように点々と死体が一方向を向いて横たわっていた。

このときに生き残った世界人口は、最終的に約900万人。
北海道は560万人が被害時に生き残ったが、災害の影響で160万人が死亡して約400万人。

ブエノスアイレス島は約1000万人が被害時に生き残ったが、かつて無い寒さと飢えに局面することになり、半数の約500万人に人口が減ってしまった。

当時、地球上の人口は67億人いたが、670分の1、0.15%の比率になってしまった。

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【四話】

落ちてしまったコップの破片を拾い集めながら、彼にテレビの電源を入れて貰う様に頼んだ、地震があった場合は大抵テレビで震源地や規模等の情報が確認出来る筈だった。

2F建ての2Fにある彼の部屋は西向きで、日が暮れかけて来ていたので、西日が反射して画面が見づらかった。

1CH・・・2ch、3chとチャンネルを送ってみたけど、いつもの普段通りの番組だった。
「なんだろ?さっきの確かに地震だったよね〜綜君」
彼は返事しない・・・たまにこうなのだ。ボーッとしてるのか無視してるのか解らない時がある。
9chまでチャンネルを回して画面に意識が集中した・・・。
9chは住んでいる地元の地方チャンネルの筈だけど、画面に写っている空が妙に縦に揺れていた。走っているらしい・・・。先を走っている女性キャスターの物と思われる足がたまに写っている。
「ざざざざざざざっザーーーー」て音がして、その後小さな声で「もう駄目だよ・・・」って聞こえた後、カメラがちゃんとした映像を写した。
大雨の中、遠くに東京タワーが写っていた。
東京は大雨なのかな?ここは少し離れた浦和の近くだけど雨は降ってなかった筈だ。
と・・・東京タワーの後ろに大きな黒い壁が迫って来てた。
その壁は東京タワーの倍くらいの高さまで高く見えたが、次第に3倍、4倍と高く見えた所で、東京タワーもその壁に飲まれて・・・・。
最後に女性キャスターの「え・・・」って声がした後、画面に何も写らなくなってしまった。
綜君と顔を見合わせて、窓の外を見たが西側から見える山側沿いの夕焼けは綺麗だった。
と、突然家の中がシンとなった。
外で鳴いていたセミの音が無くなり、代わりに「ごごごごごごごご」って音が聞こえて来た。

彼が急に私の手を引いて東側の玄関へ誘導して、玄関のドアを開いたら、凄い豪雨で目の前に・・・先程テレビで見た黒い壁がそそり立っていた。東から迫り来る暗闇の壁と共に次第に大きくなる波の音しか聞こえなかった。

「××××××××××」
何か彼が私に言っていた。
ドアを閉めてそのまま手を引かれて、家の中に入ろうとしたら、凄く家が揺れて私は足がもつれて転んでしまった。

「・・・」
びっくりした。彼が突然私の肩と足に手をまわして私は抱き上げられてしまった。

凄く揺れている状況下で彼に・・俗に言う”お姫様抱っこ”をされながら私は『これがもしおぶさる格好になってたら絵にならないなぁ〜』とか『おぶさったらそれはそれで、
成長した私の胸を背中から押し付けた彼は欲情とかするのかな??』とか不審な妄想をしていた。
人間は想像し得なかった場面に出くわすとその状況を認知するのを拒否して関連無い事柄を考えるそうだけど・・・まさに今の私がその状態だった。

というか、真っ暗なのだ。何も見えない・・・ドアを開けた瞬間に一帯の街の明かりが消えて行くのが見えた。手を引かれた時には暗闇だった。

私を抱いている彼が綜くんか?というのも目で確かめる事が出来ないが、彼の体温とすぐ近くにある彼の呼吸する息が、ほのかにミルクの香りがするので安心出来た。

というか、、ハァハァ言ってる・・・重たいのか?私は最近1.5kくらい太った。ごめんね綜くん・・・・・・しかしこんな私を抱えて真暗闇で動ける彼はやはり人間離れしていると思った。

彼が何処に来ているのか解った。
洗剤の匂いがしたからだ。《部屋乾し用トップ》の匂いだ。
脱衣所の洗濯機が置いている所だ。
"カチャ"って音がして《ビオレUアップルマンゴー》の匂いがした。
浴室の匂いだ。
両方とも私が選んであげたモノだった。私はこの浴室を使った事は無いけど。

「・・・バタン・・・」浴室に入って扉を閉めたようだ。
その時「ズズ〜〜〜〜ン」と低く大きな音がした。
一瞬気が遠くなって、続けて体がふわっと持ち上がった感覚がした。
その時、彼が私をしっかり抱こうとした時、口元にやわらかい感触がした・・・。

恐ろしい災害状況下で偶然に起こった15歳のファーストキスだった。
人生で最悪の状況下で人生最高の瞬間だった。
真っ暗で見えないかと思いニタニタしてしまった。私って破廉恥だなぁ〜。

「澪菜ここに座って」彼が始めて口を開いた。
暗闇の中、椅子状のモノに座らされた。
背もたれもあり、アームレストもある・・・なかなか座り心地が良い。
彼も横の椅子に座っている様だ。

・・・でも・・・あれ、ここって浴室じゃなかったけ?椅子なんかある訳ないよね・・・
それに浴室に向かう時に聞いた”迫り来る波と破壊の音”はしなくなっていた。
逆に自分の心臓の音が”どきんどきんどきん”と波打って聞こえた。なんだか頭の中にも心臓があって鳴っているかの様にも聞こえた。

あまりにも静寂なので、少し恐ろしくなって彼に話しかけた。
「ねぇ綜くん、さっきのファーストキスだよね?」
・・・ぎゃ〜〜〜〜〜こんな時に何聞いているんですか私は〜〜〜〜馬鹿っぽい〜〜〜!!
・・・でも・・・あ〜〜〜やっぱり返事帰ってこないや・・・

違う事聞こう。
「ねぇ〜綜君、ここってもしかして浴室じゃなくて、宇宙船とかかな?」

今度は返事が返って来た。
「違う・・・宇宙船みたいのは他にあるけどコレは全く違うかも。」
「シェルターみたいなの?」
「シェルターといえば防護する意味では似てるけど、ちがうかな。」
「どっちにしても助けてくれたんだよね、ありがとう綜君。・・・もう少しで私たち死んじゃう所だったんだよね?お父さんお母さんや友達とかは大丈夫かな?」

「・・・・・・」また彼が黙ってしまった。
暫くしてから彼が言った。「明るくして外を見てみたい?」
「ちょっとだけ見てみたいかな・・・でも怖いのだったらやだな〜」

彼が言った「じゃあ、明るくする前に僕の話を良く聞いて貰って、君が理解したら明るくする事にするよ・・・」

なんだろう・・・何か含みのある言い方だった。
私は少し不安になった。

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【伍話】【六話】

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